グースにあった日
この絵本に出てくるグースとは、北アメリカ地方に生息しているカナダガンのことです。ツンドラ地帯で子育てをし、冬が来ると、越冬地に向かって一斉に飛び立ちます。
毎年グースたちと遊ぶのを楽しみにしている少女がいました。その年も、春の訪れと共にグースたちが帰ってきましたが、どうしたことか、群れの中に1羽だけ片足がちぎれそうになっている鳥がいました。そして、翌日には、無残にも一本足になってしまっていました。
少女と家族は、どうか強く生き抜いてくれますようにと祈りながらこのグースを見守ります。グースは少女の撒いたとうもろこしをついばみ、少しずつ片足だけで移動できるようになります。泳ぐこともできました。でも、飛ぶことはできないようです。このままだと冬を越すことができません――。
翌年の春、沼に降り立ったグースの群れの中に、いました、あの片足のグースが。無事を喜ぶ少女たちの前を、お母さんになった片足のグースがぴょこぴょこ行進していったのでした。
実話が基になっています。清冽な北米の自然の中、たくましく生きる鳥たちの姿が清々しい絵本です。また、野生動物と一定の距離を保ちながら、しっかり見届けている人間の家族も新鮮に思えました。
キャリ・ベスト 文 ホリー・ミード 絵 まえざわあきえ 訳 福音館書店 1,365円
(2003年 ’平成15年’ 12月29日 84回 杉原由美子)