ふゆめがっしょうだん

 寒い寒いとは言いながら、間違いなく日差しは明るくなってきました。裸ん坊の落葉樹たちも、枝の先っぽ辺りはほんのり赤みが差してきました。芽吹きの日に向け、いよいよカウントダウンを始めたようです。
 今回の絵本は、冬の木々の姿を撮影したものです。それも、う~んと近づいて、葉っぱの落ちた部分にピントを合わせています。なぜかというと、葉っぱがとれた跡を撮影しているからです。晩秋に葉っぱが散ったとき、木の方には、葉っぱへ送っていた水や養分を運んだ管の跡が残ります。おもしろいことに、それがちょうど動物の目鼻のように見えるのです。植物写真家の富成さんと茂木さんは、この目鼻を見れば、それが何という木であるかも分かってしまうそうです。この絵本には20種類余の木が登場しています。
 私は、恥ずかしながら、初めてこの絵本を見たときは、木に細工を施してあるのかと疑いました。だって、ほんとうに、笑っていたり怒っていたり、思索していたりという顔に見えるので、びっくりしてしまったのです。こんな不思議とユーモアが、1本の木の中に隠れているとは、全く知りませんでした。
 写真にぴったりの言葉をつけたのは、長新太さん。ほのぼのと温かく、木は友だちなんだよな、と実感することができます。
 大事なことをもうひとつ。今の季節は、落ち葉の跡の顔を見ることはできません。もう、とっくに新芽が出始めているからです。11月ころにまた思い出して、木を見てくださいね。

富成忠夫・茂木透 写真 長新太 文 福音館書店 880円  (2005年 ’平成17年’ 2月16日 97回 杉原由美子)

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