アリスンの百日草

 新学期が始まりました。みなさんは、自分が小学校に入学したときの国語の教科書を覚えていますか? 私のときは、「ひろこさん はい」で始まりました。最近は、「あかるい あさひだ あいうえお」となっているようです。 私の父母のころは「サイタ サイタ サクラガ サイタ」でした。当時としては画期的な教科書だったそうで、 サクラ読本と呼ばれて親しまれました。たしかに、大きな戦争が目前に迫っている時代とは思えない、美しい響きを持った文ではないでしょうか。
 今回の絵本「アリスンの百日草」は、言ってみれば、英語圏の子どもたちのあいうえおの本です。「アリスンはベロルのためにアマリリスを」で始まり、「ベロルはクリスタルのためにベゴニアを」と続き、「ジーナはアリスンのためにジニア(百日草)を・・・」と、最初の子の名前につながって完結します。
 そう、登場する女の子たちの名がAからZ、その子たちが世話している花の名がAからZ、そして残念ながら日本語では表現できないのですが、女の子たちの行動にもAからZで始まる動詞が使われているのです。
 よくできた言葉遊びであり、1枚1枚が鑑賞に堪え得る植物画でもあります。そればかりか、作者のアニタ・ローベルは、26人の女の子みんなに、しっかりとした個性を持たせて描いています。それというのも、みんな、アニタの友人だったり親族だったり、憬れの芸術家だったり、それぞれモデルとする女性がいるからなのです。どおりで、魂のこもった絵本になるはずです。
 アニタはポーランド生まれ。この絵本の中の花のように華やかで人なつこそうな女性です。ナチスの迫害から奇跡的に生き延びて、アメリカの美術学校で夫となるアーノルド・ローベルと知り合いました。夫のアーノルドもたくさんの絵本を世に送り出しています。小学2年の教科書に載っている「お手紙」もその1冊です。がまくんとかえるくんの、と言えばお分かりでしょう。こちらも機会があればご紹介したいです。

アニタ・ローベル 作 セーラー出版 2,100円  (2005年 ’平成17年’ 4月20日 99回 杉原由美子)

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