はちうえはぼくにまかせて
ある日、トミーは両腕に大きな植木鉢を抱えて帰ってきました。「いったいどうしたの?」とお母さんにたずねられて、「ぼくんち、夏休みにどこへも行かないから、好きなことしてもいいって言ったでしょ。ぼく、近所の人の鉢植えを預かることにしたんだ」
びっくりしている両親を尻目にトミーのにわか植木屋さんは大繁盛。おかげで、トミーの家の中は、玄関も居間もお風呂場も鉢植えでいっぱいになり、まるでジャングルで暮らしているみたい。トミーは、こんなおもしろいことはなかったと、ご機嫌で植物の世話をしますが、お父さんはどうも気に入らないようすです。おまけに伸びすぎた植木が悩みのタネになってきます。近所の人たちがバカンスから帰ってくるまでになんとか解決できるでしょうか……。
わたしも、小学生のとき、植木の水遣りのアルバイトをしたことがあります。菊作りが趣味の隣の家のおじいちゃんが、3日ほど家を空けることになり、朝夕、菊に水を遣ってほしいというのです。そうなると、運ぶのは植木鉢ではなく、ジョウロということになります。
背戸の小川でジョウロに水を汲み、家をぐるりと回って、庭の菊たちに順々に水を遣ります。葉っぱにかけずに根元にかけてね、と教わっていましたから、気をつけて、そのように。小川と庭の間を何往復したでしょうか。さすがに、ちょっぴりくたびれました。早起きも苦手だったし。それだけに、帰ってきたおじいちゃんが「菊が元気でうれしかった」 と言ってくれたときは、ほんとうにうれしかった。ご褒美に何をもらったかは忘れてしまったのに、おじいちゃんが喜んでくれた、自分の仕事が認められた、という満足感が宝物になって心に残っています。
トミーにもうれしい結末が待っています。この絵本の作者コンビには、『どろんこハリー』という代表作があります。ここにもおもしろいことを考え出す子どもや犬が登場して、愉快な気持ちにさせてくれます。
ジーン・ジオン 作 マーガレット・ブロイ・グレアム 絵 もりひさし 訳 ペンギン社 1,260円
(2005年 ’平成17年’ 7月20日 102回 杉原由美子)