落ち葉
今年の11月は暖かいですね。それでも突然思い出したように冷たい風が吹き荒れて、色づいた木の葉を撒き散らしています。それは、空中では、小鳥たちが木から木へ飛び移っているように見え、地面では、足元に近づいて来たかと思うとあっという間に通り過ぎるさざ波のようです。今、富山市の城址大通りを歩くと、落ち葉のピラミッドがあっちにもこっちにも。こまめなだれかがほうきで掃き集めたのかな。いいえ、それは風の仕業です。自分のいたずらはちゃんと後始末しましたとでも言いたげに、きちんとまとまっているのが面白いです。
さて、その落ち葉を1枚、おうちに持ち帰ってやってくれませんか。そして、色が変わらないうちに、スケッチしてやってくれませんか。え、難しいって?
そうなんです、若葉のときと違って、落ち葉は色あいが複雑で、おまけにあちこち穴があいていたり縁が欠けていたりしますからね。
今回の絵本は、そんな落ち葉の絵ばかり集めた本です。作者の平山和子さんは、自然物を精緻なイラストで描く画家で、『くだもの』『やさい』『いちご』など、幼児に大人気の作品が多数あります。『落ち葉』は、平山さんが、黒姫山のふもとのアトリエで、20年近くにわたって描き続けた絵がもとになっています。
平山さんに拾われた落ち葉は、木を離れてもなお、机の上で刻一刻と色が変化していきます。急いで筆を走らせる平山さんですが、1枚の葉で2種類の絵になったこともあるそうです。虫に喰われて無数の穴があいた落ち葉、複雑な色の組み合わせが地図のように見える落ち葉、大きな葉っぱの上に小さな葉っぱがモザイクのように埋め込まれた落ち葉……。等身大(実物大というべきか)に描き出された落ち葉1枚1枚には、みな、平山さんと出会った場所や時期や、その日の天候などの思い出も込められていて、「たいへんだったんだねえ」なんて、ねぎらいの言葉をかけたくなります。
思えばどの落ち葉も、生まれた時は、みな同じような色だったのではないでしょうか。早春から初冬までを生き、木の葉としての役目を終えるときに、同じものが二つとない姿に変わっているのです。さながら、人の運命のように。「描かずにおられない」から描くという平山さんの、人間としての心の温かさが伝わってくる絵本です。読んで、そして落ち葉の絵を描いてみませんか。
平山和子 文・絵 平山英三 構成・写真 福音館書店 1,365円
(2005年 ’平成17年’ 11月16日 106回 杉原由美子)