絵本アフリカの人びと

 4年前のワールドカップサッカーがまだ記憶に新しいのに、もう次が始まったのか、と感じています。それほど、前回の印象が強いのです。あの大会のおかげで、サッカーと、共同開催国だった韓国に、より深い知識と親しみを持つことができるようになりました。そして今回の注目はアフリカです。いよいよアフリカらしいアフリカチームが登場してきたように思えるのです。
 「絵本アフリカの人びと」では、何百もあるといわれるアフリカの部族から、26の部族についてその特徴を描き出しています。「アシャンテ族の絹の織り物」「エウェ族の太鼓を使っての通信」「ファンテ族のヤシの木から作るお酒」「レンディレ族の持ち運びのできる家」等々、伝統的な風俗・文化・生活様式を、美しい絵に描き出して紹介しています。
 ただ、どの国にどの部族が住んでいるかということになると、たいへん複雑に入り組んでいますし、多くのアフリカの人びとは、現在は、移動することのない建物に住んで、車を利用し、食料はスーパーで調達、という暮らしをしているのですから、この絵本が日常の姿というわけではありません。
 作者は、西欧文明がアフリカに持ち込まれる以前からその地域に育っていた文化、そこで誇りを持って生きてきた人びとの姿を世界に知らせたかったのです。
 「世界に知らせたかった」のは、W杯のチームも同じ。それから今、富山市の映画館「富山松竹」などで上映されている「ホテルルワンダ」も。 昨年の今ごろ、日本での配給会社が決まらなくてSOSを発信していたアカデミー賞ノミネート作品です。これもまた、アフリカからの、部族や国境を越えたメッセージの一つです。

ディロン夫妻 絵 マスグローブ 文 西江雅之 訳 偕成社 2,520円
(2006年 ’平成18年’ 6月21日 112回 杉原由美子)

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