モモのこねこ

 先月、この絵本の作者、八島太郎の生誕100年を祝う会が、故郷の鹿児島県で開催されました。
 お話は今から50年くらい前にさかのぼります。ニューヨークからロサンゼルスに引越したモモは、馬やカウボーイに会えると期待していたのに、そういうものは全然いなくてがっかりでした。でも、その代わりに、道端で拾った子ネコを飼ってもいいことになりました。初めは小さくて情けない様子をしていたネコは、大切に世話をしたおかげでみるみる太っておおらかに育っていきました。そして、ある秋の朝、ネコは5匹の子どもを産んで、お母さんになったのです。
 5匹の子ネコは毛並みがそれぞれ違うように、性格も別々でした。おとなしいネコ、好奇心旺盛なネコ、狩りのうまいネコ、昼寝の好きなネコ…。もちろん、モモにとってはどれもこれも宝物。けれども、5匹の子ネコを育てるには家が狭すぎるので、人にゆずることになりました。モモは、5匹を忘れないように、それぞれに手製の血統書を作ってやりました。
 血統書によれば、子ネコたちは1958年生まれということになっています。作者の八島夫妻は、その反戦思想に圧力をかけられ、第二次大戦の直前、長男を日本に残してアメリカへ渡っています。戦争が終わってアメリカに呼び寄せたとき、長男のマコトさんは15歳になっていました。両親と共にそこで待っていたのは、子ネコならぬ、赤ん坊のモモさんでした。子ネコを慈しむ画家の目に見えていたのは、何よりも、平和な時代が来てようやくいっしょに暮らせるようになった家族そのものだったと思います。絵本は、陽光まぶしいアメリカ西海岸の空気をよく伝え、子どもたちの明るい未来を予見しているかのようです。
 生誕100年祝賀会には、モモさんも出席しました。兄のマコトさんと同じく俳優となって、アメリカで活躍されています。そして、2人の娘さんのお母さんでもあります。

やしまたろう・やしまみつ 作 やしまたろう 絵 偕成社 1,470円  (2009年 ’平成21年’ 6月24日 145回 杉原由美子)

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