ポインセチアはまほうの花
大寒のころに生まれた末娘は冬が好き。この時季、鰤おこしの雷が鳴ると、ひぇーと首をすくめながらも 「雪が降るー、ブリが食べれるー」と喜色満面になります。
雪は降ってもほどほどに、というのが大人の本音ではありますが、年の瀬特有のせわしなくて楽しいような気分は共通です。街に流れるクリスマスソングと、赤と緑のコントラストもみごとな ポインセチアの色彩のせいでしょうか。
今回は、このメキシコ原産の植物、ポインセチアにまつわる伝説をもとにした絵本です。
はるか遠くのメキシコも今ちょうどポサダが始まるころ。ポサダとは、クリスマス前9日間のお祭りのことです。日本でもお誕生会などに作られるようになってきた「ピニャータ」というくす玉があちこちに吊るされます。星のお化け(失礼)みたいな形をしていて、中にはお菓子がいっぱい詰まっています。
また、子どもたちは歌いながら近所をめぐり歩いてお菓子などをもらうのです。フアニータも去年までは兄弟や友だちとポサダを 楽しむことができました。ところが、今年はお父さんが失業したために、特別なごちそうや贈り物はなし、ということになってしまったのです。
クリスマスイブ、フアニータの家族は質素な夕飯をとり、お父さんの弾くギターに合わせて好きな歌をうたいました。満ち足りたひとときでした。けれども、真夜中近く、教会へいく時間になるとフアニータはどっと悲しみにおそわれます。イエスさまにあげる贈り物が何もないからです。涙ぐむフアニータに気づいたおかあさんは、「あなたのその心が何よりの贈り物よ」と言ってくれるのですが。
教会の前まで来て、どうしても中に入れないで立ち尽くすフアニータに話しかけるものがあります。「わたしのまわりにある草をぬいて持って行きなさい」。声の主は天使の石像でした。フアニータは天使の言葉に導かれ、雑草にしか見えないその草を両腕いっぱいに摘んで教会へ入っていきます。イエスさまのゆりかごまできたとき、フアニータのかかえていた草は深紅の星型の花となって人々を感動させたのでした。
ジョアンヌ・オッペンハイム 文 ファビアン・ネグリン 絵 宇野和美 訳 光村教育図書 1,575円
(2010年 ’平成22年’ 12月22日 162回 杉原由美子)