うできき四人きょうだい

 あるところに男の子ばかり4人を育てた男がありました。男は、4人の息子が自分と同じくらいの背丈になったころ、よその土地へ行って仕事を覚えてくるようにと、家から送り出しました。いっしょに出かけた4人は、道が四辻に分かれている所で、「4年たったらまたここで会おう」と約束をかわし、それぞれの道へ進んで行きました。
 果たして4年後、長男は、目にもあざやかな仕事ぶりのどろぼうに、 次男はこの世のものは何でも見える望遠鏡を手に入れ、三男は一発必中の狩人に、そして末っ子は針一本で何でも縫い合わせるという、うでききの仕立て屋になりました。
 約束通り四辻で落ち合ってお父さんのところに帰ってきた息子たちに、さっそくその腕を試すチャンスがおとずれます。王様が、「竜にさらわれて行方不明になった姫を探し出すように。無事に連れ帰った者には、姫を嫁にやろう」というおふれを出したのです。
 4人兄弟は各人の得意技を駆使して、大海の孤島に捕らわれていたお姫様を見事に救い出します。そうですね、問題はそのあと。お姫様を4等分はできませんもの。4人はおのおの自分が一番、と思っていますから、譲るわけにはいかないのです。険悪な雰囲気になってしまった兄弟げんかは、太っ腹の王様の仲裁でめでたくかたがつきます。
 私はこの絵本の全部が好きです。お話も絵も訳文も。その秘密はきっと、4人の息子が「うできき」というだけでなく、美形揃いに描かれているからです。お姫様の数が足りないなら、うちの3人娘はいかがなものでしょうか、と思ってしまうくらい。腕一本で人生を築き上げようとする人間のかしこさ、たくましさに惚れ惚れしてしまいます。
 画家フェリクス・ホフマン生誕百年を記念して、久々に復刊されました。

グリム童話 フェリクス・ホフマン 画 寺岡寿子 訳 福音館書店 1,365円
(2011年 ’平成23年’ 7月20日 168回 杉原由美子)

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