こんな家にすんでたら
2020年に東京で夏季オリンピックが開かれることになりました。56年ぶり、2回目の開催です。前回は10月10日が開会式で、すばらしい青空だったことを覚えています。今回はどんな感動を体験できるのか、やっぱりわくわくしてきますね。世界中からお客さまが来てくれます。前回参加していなかった国や地域もたくさん来るはずです。まずはこの絵本を開いて、世界のおうちの見学を始めましょう。
表紙には、紺碧の海を背景に、白壁の家々が立ち並んでいます。さて、どこでしょう。そう、ギリシャです。 エーゲ海に浮かぶアスティパレア島の街並みです。この真っ白い壁は、石やレンガを積んだ表面を漆喰で固めて作ります。千年以上続いている建築方法です。新築しても似たような家ができるので、町全体が迷路のようになってしまいました。実際、外敵の侵入を防ぐための工夫でもあったのです。
岩の中の家もあります。洞窟に住んでいたのは大昔のことと思っていたら、今もちゃんとあるのですね。ここでは、スペインのグラナダ地方の洞窟住居を紹介しています。中は湿気もなく、快適に過ごせます。ここで生まれ育った子どもたちは、私たちの住んでいるような、屋根と壁で作った家のほうが珍しいと思っているそうです。
雪景色の似合うスイスのシャレー、グリム童話の舞台のようなハーフティンバー様式のドイツの街。 おなじみのモンゴルのパオ、中国の土楼も取り上げています。珍しいところでは、海の上に建っている家。それどころか、海に浮かんでいる家も出てきます。
そして、この絵本の特徴は、すべてペーパークラフトで表現してある点です。建物はもちろん、背景や、人間、 動植物に至るまで、切ったり折ったり貼り付けたりして構成されています。細かな作業です。見れば見るほど、作者の手の温もりが伝わってきます。その丁寧な仕事ぶりを堪能しながら、世界のいろいろな家を訪ねてください。
ジャイルズ・ラロッシュ 作 千葉茂樹 訳 偕成社 1,680円 (2013年 ’平成25年’ 9月18日 192回 杉原由美子)