海へいこうよ

 タミとアキは仲良し姉妹。夏のある日、お母さんがおつかいに出かけるやいなや、うちの中で世界旅行ごっこを始めました。地球儀を回して適当なところをつついて行き先を決めるのです。 この日の行き先はチベットと決まりました。
 チベット→高山→雪→雪男。「そうだ、雪男に会いに行こう」タミとアキは、おしいれからふとんやマットレスをどかどか引っ張り出して登山道を作りました。道からそれたら谷底へ まっさかさまです。あともうちょっとで頂上というところで、アキは雪男につかまりそうになりました。さあ、たいへん。ざぶとんの島をぴょんぴょん越えて、となりの部屋までひとっ飛び。 廊下を回って台所へ入ると、「いちぬけた。おやつにしよう」
 寒天入りのおやつを食べていた2人は、おばあちゃんの家の近くにある海を思い出し、海へ行きたくなります。「この部屋を海にすればいいんだよ」。そして、それらしい色の服やなんかを部屋中に敷き並べてみたのですがどうも雰囲気が出ません。「そうだ、いいこと考えた!」タミが取り出したのは、なんと青色のクレヨンでした。
 いいなあ、この感じ。留守番は、兄弟姉妹がいると楽しいですよね。ままごとも人形遊びも、大人がそばにいないほうが断然おもしろいです。この絵本では、タミちゃんが1年生、アキちゃんが年中さんくらいの設定です。お姉ちゃんのほうが少しだけもの知りなので、遊びの主導権も握っています。アキちゃんはお姉ちゃんのすることなら間違いないと思っているので、自分も 水色のクレヨンを持ってきて・・・。
 この絵本は、3年前に出版される予定でしたが、未曾有の大地震と津波に見舞われた地域があるのに、海を楽しむ絵本を出すことはできないと、中断されていました。今回、更に内容を 深め、言葉と絵を練り直して、子どもたちの元気のためにと、刊行されました。
 のびのびとした絵が、海の大きさ、優しさ、懐かしさを感じさせてくれます。また、タミちゃん、アキちゃんの家族の温かさも絵本の隅ずみから伝わってきます。別々に育ったはずの 作家さんと画家さんの気持ちが、不思議なくらいにとけ合って、安らぎを与えてくれる絵本です。

黒澤絵美 文 かべやふよう 絵 アスラン書房 1,620円  (2014年 ’平成26年’ 8月20日 202回 杉原由美子)

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