ふようどのふよこちゃん おやまはだいじ
富山県の新米の、そのまた新米は「富富富」と書いて「ふふふ」といいます。よろしくお見知り置きを。今回ご紹介します「ふようどのふよこちゃん」も、 漢字で書いたら「腐葉土の富余子」ちゃんというところでしょうか。「ふようど」は、間違っても「不要土」ではありません。 生き物を育てるのに適した、栄養分いっぱいの土を「腐葉土」と呼びます。砂でもなく粘土でもなく、あたたかくて適度な湿り気と空気を含んだ命の源の土です。
ふよこちゃんは、日本のどこかの里山で生まれ、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、お兄ちゃんお姉ちゃんたちに大事にされて、 すくすくと育ちつつあります。近所の友だちのふようどの子どもや、たくさんの草や木や花、動物たちと、仲良く幸せに暮らしています。
ある日、おじいちゃんがふよこちゃんを誘い、2人で昔からの親友に会いにいくことになりました。途中、珍しいことに、 1人の人間のおじさんを見かけます。おじさんは、山の守り神の棲む池に向かって、何やら拝んでいきました。何を拝んでいたのか、 おじいちゃんの親友であるオオサンショウウオさんは知っていました。オオサンショウウオさんこそは、この山一帯の守り神さまなのです。
「さいきん、さとのわき水が枯れてしまったそうだ。なんとかしてほしいとおがんでいった。あちこち掘り返したせいじゃろう」
その夜、山全体がぐわんぐわんと揺れたのでしたが、朝になると、ふもとの村のそこここに水が湧き出して、人間はたいそう喜んだのでした。
豊かに生きているふよこちゃんとその家族を描くことで、腐葉土、すなわち自然の恵みの大切さを知ることができます。
地球誕生から46憶年。陸地ができて、植物が育ち始めたのが4憶年前。さらに、鉱物と動植物の遺骸が混ざって腐葉土といえる土ができ始めたのは、 ごく最近のこと。薄皮のように陸地を覆っている土は、風に飛ばされたり、水に流されたり、人為的に埋めたり汚染させられたりして、どんどん減っています。
いったん失われた腐葉土は、1㌢の厚さに回復するのに100年以上かかるそうです。ふよこちゃんが、末長く健康に育つよう、まずは足元の土を守りましょう。
飯野和好 作 理論社 1,512円 (2018年 ’平成30年’ 10月17日 250回 杉原由美子)