ほげちゃんとおともだち

 ほげちゃんは、まさるおじさんからゆうちゃん宛てに送られてきたぬいぐるみです。まさるおじさんってだれだか、わかりません。この手のお話だと、「おばあちゃんの手づくりのぬいぐるみ」が、おきまりの設定なんですけど。まさるさんが何者かわからないだけあって、ほげちゃんも何の動物なのか判然としません。
 受け取ったときの第一印象は、お父さん「へんな顔だなあ」、お母さん「そうねえ、カバなんてゆうちゃん気に入るかしら」でした。自分はくまのぬいぐるみであると信じていたほげちゃんは、この言葉の暴力がトラウマとなって、少々短気な性格になってしまいました。
 幸いなことに、推定年齢1歳の女の子、ゆうちゃんは、この何だかよく分からない動物のぬいぐるみが気に入りました。まだ小さいので、上品に遊ぶことこそできませんが、それこそベタベタに可愛がってくれました。おかげでほげちゃんも自信を得て、無事家族の一員に納まります。そこまでが9年前の第1作。
 今回の作品は4作目です。この間に、ほげちゃんは動物園で迷子になったり、一時預かりの子犬の世話をする羽目になったり、山あり谷ありのぬいぐるみ人生を送ってきたのでした。
 本作では、ゆうちゃんのお友だちの家を訪問します。お友だちというのは男の子なので、持っているおもちゃが刺激的。かける言葉も遠慮なし。ほげちゃんは、バカにされまいと意地を張ったばかりに、お友だちのお姉ちゃんが大切にしている美しいお人形を怒らせてしまいます。自分でまいた種とはいえ、窮地に追い詰められるほげちゃん、さあどうする…。
 かわいい、賢い、正義の味方、などどいうレッテルとは無縁のぬいぐるみが主役を張って4作目、というのは快挙です。怒りっぽいけど情深いほげちゃんには、子どもも大人もつい、ほろりとさせられるのです。新しいタイプの人気者の登場です。

やぎたみこ 作 偕成社 1,100円  (2020年 ’令和2年’ 11月18日 273回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

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