ないたにわとり

 村のはずれにあるおじいさんの家の庭には、春ともなれば庭一面にたくさんの花が咲いて、にぎやかに歌っているかのようでした。そこには一羽のにわとりもいました。おじいさんは気づいていないようですが、にわとりはとてもいばりんぼうでした。
 花たちがおとなしいのをいいことに、「ふん、なんてみっともない花ばかりなんだ。それに比べてこの真っ赤なとさかは、なんてきれいなんだろう」といばりながら歩き回っていました。
 そんなある日、庭に真っ赤なバラが花開きました。バラは、天性の女王さま気質を発揮してのびのびとふるまい、たちまち庭の人気者になります。にわとりはそれがおもしろくなくて「なんてひどい色」とか難くせつけてわめきちらし、バラも負けずに堂々と言い返すので、大げんかになるのでした。
 何も知らないおじいさんは、「ああ、なんてきれいなバラなんだ」と喜んで、「もうすぐ孫たちが来るから家の中に飾ってやろう」と、バラの花をチョキンと切り取って、持って行ってしまいます。バラにとっても、そして、にわとりにとっても、全く予期せぬ事態が発生したのです。
 「ふん、バラがなんだっていうんだ」
 にわとりはやたらに庭を駆け回りますが、胸に迫ってくる虚しさで、お得意の「コケコッコー」の声も出ないのでした。雨の一夜が明けて、明るい朝日に照らされた花たちを見たにわとりは、初めて、すべての花たちがとてもきれいだということに気づいたのでした。そして、おじいさんの家の窓べに飾られたバラもまた…。
 リソグラフという方法で印刷された画面は、素朴で懐かしい味わいがあります。お話はシンプルながら、幸せな気持ちの育て方を思い出させてくれます。
 余談ですが、我が家の庭には2種類のバラがいて、豪雪や日照りにも耐えて5年以上枯れずに育っています。バラは草ではなくて木なので、花を切っても次々に咲きます。美しさとたくましい生命力がある植物です。

スズキトモコ 作 ひかりのくに 1,408円 (2024年 ’令和6年’ 4月28日 312回 杉原由美子)

毎日新聞/Web   プー横丁/TOP

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です