おいしさつながる 昆布の本

 この本の著者の松田さんは北海道生まれで、子どもの頃から昆布に親しんできました。長じてイタリア料理の料理人になってから、地元の食材の大切さに目覚めて、昆布を積極的に使ってみることにしました。すると、昆布はそのままでおいしいのはもちろん、他の材料のうまみを引き出す力があることも分かって、それは「和食のだし」にとどまらず、世界の食卓に通用するという発見だったのでした。
 そんな昆布の魅力を広めたくなった松田さんは、北海道を主とした昆布の産地を訪ね、育ち方、漁の方法、商品にするまでの加工の手順に至るまで、何年もかけて記録を積み重ねました。料理人として、さまざまな具材と昆布の料理にも挑戦しました。
 その間に、昆布産地ではない沖縄県にも昆布料理が多いことを知って、昆布ロードの探求につながりました。
 いつ、だれが、どのように昆布を運んだのか。全国的に昆布を広めたのは、江戸時代から昭和初期にかけて、日本海側を航行した北前船でした。北前船は北海道で積み込んだ昆布を瀬戸内海を通っていったん大阪におろします。そこから薩摩藩に行った分は、琉球を経由してなんと、中国大陸の清国にまで到達していました。戻りの船には富山藩が必要としていた薬の原料も積んでありました。富山県が昆布の消費量でいつも上位にあるのにはそんな背景もあったのですね。
 私も、昆布にはいつも大変お世話になっています。我が家の朝ごはんは、みそ汁作りから始まります。私は毎朝粉末の昆布だしを使います。能登生まれの姑は、みそ汁のだしに煮干しも使っていましたが、私は、どんな食材とも相性のいい昆布に決めています。おそらく年間350回くらい使っているでしょう。そのほか、夏にはきゅうりの、冬には白菜の漬け物に、必ず昆布を混ぜます。この本には、さらにたくさんの美味しい昆布料理が紹介されています。
 自然環境も国際情勢も安定して、昆布が、長く広く世界中に運ばれるといいですね。

松田真枝 文 キッチンミノル 写真 得地直美 絵 福音館書店 810円 (2024年 ’令和6年’ 8月25日 316回 杉原由美子)

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