まんいんでーす!

まんいんなのは、電車でもお店でもなく、野菜の中身です。えんどうまめと、みかんと、にんにくと、くりと、とうもろこしの。はい、それで全部です。なにしろ見返しや遊び紙もついていない赤ちゃん向きのボードブック、全20頁というお手軽仕様なのです。お手軽な割には、何回読んでも飽きない面白さがあります。
えんどうまめに限らず豆のさやをあけたらお豆がぎっしりまんいんだった、というのはほんとうにうれしいです。私は、おもしろい絵本ができたとうれしかった半面、畑仕事のたいへんさも少しは知っているつもりなので、実際はそんなにうまく実らないんだよと、冷めた感想も持っていました。でも、この絵本をにこにこと買ってくださるお客さまがあって、自分ももっと自信を持って応援したくなりました。そして、作者の平田景さんのホームページを見つけてのぞいてみたらば、すごいことがわかりました。
平田さんは、この絵本を作るにあたって、実際にえんどうまめを種から育てたのです。それも2種類を。秋に蒔いた種が芽を出して初冬に花をつけ、収穫できたのが翌年4月だったと、写真入りで記録されています。そして、えんどうご飯にして食べて、とても美味しかったという大満足の結末になっていました。なんと、長い時間をかけておられたのですね。
絵本に登場するのは、「えんどうまめです」とおすまししているさやと、それをぱかっとあけたら、当たり前の顔をして「まんいんです!」と応じるまめたち、その2場面だけなんですけどね。作者にとっては我が子のようなものですね。
今年、我が家の畑では、いんげんはまあまあでしたが、さやえんどうは少なめ、えだまめは凶作でした。生きものは、自然の力を借りて育ちます。人間ができることは、まず種蒔き。まんいんでーす、の年もきっとあると楽しみにしています。
(平田景 作絵 ひさかたチャイルド社 1,210円 (2025年 ’令和7年’ 11月22日 319回 杉原由美子 )

